功績

15年、15の視点: AIは人のコラボレーションをいかに再定義するか

AIは単に業務を自動化するだけでなく、働き方そのものを根本から変えていきます。Zoom創設者の兼CEOであるEric Yuanが、これからの15年は「より人間らしさが増す時代になる」と確信する理由を語ります。
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公開日 2026年7月14日

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Eric S. Yuan
Eric S. Yuan
CEO

Eric は、Delivering happiness(すべての人に幸せを届ける)を実現し、シームレスなビデオ環境で人同士のつながりを築くため、2011 年に Zoom を創設しました。Zoom のコミュニケーション プラットフォームは、グローバルな組織がつながりを築き、コミュニケーションやコラボレーションを行う方法を継続的に変革しています。Zoom の最高経営責任者である Eric は、同社を、2019 年にもっとも高い業績を上げたテクノロジー IPO の 1 社に導きました。

Business Insider は 2017 年、Eric をエンタープライズ向けテクノロジー部門でもっとも影響力のある 1 人として紹介しました。2018 年、Glassdoor は Eric を米国大手企業のトップ CEO として表彰しました。2019 年には、グローバル ビジネスを変えたリーダーとして Bloomberg 50 に Eric の名前が入りました。タイム誌は、Eric を 2020 年のビジネス パーソン・オブ・イヤーに選出したほか、2020 年のもっとも影響力のある 100 人の 1 人に選出しました。また、彼は 2021 年に Comparably の「Best CEO for Diversity」(ダイバーシティ部門最優秀 CEO)に選出されました。

Zoom を創設する前、Eric は Cisco のエンジニアリング部門の副社長として、同社のコラボレーション ソフトウェア開発を担当していました。Webex でエンジニアリング担当副社長も兼任しながら、Webex 創設エンジニアの 1 人として活躍しました。

リアルタイム コラボレーションで成立させた特許 11 件、申請中の特許 20 件という優秀な発明者でもあります。

本日、私はZoomの15周年を祝してナスダックのオープニングベルを鳴らすため、ニューヨークにいます。チームと共にその場に立ちながら、サンノゼで最初のオフィスの賃貸契約を結んだ2011年夏のことを思い出さずにはいられませんでした。広さはわずか645平方フィート(約18坪)、部屋番号は404号室でした。

HTTPエラーコードを連想させる番号を避けたかったため、縁起を担いで478号室に変更しました。中国の文化において、この数字は「飛躍と繁栄」を意味します。誕生したばかりの会社にとって、あらゆる幸運にあやかりたいと考えたのです。もしかすると、その幸運は今も続いているのかもしれません。
 
過去15年間で成し遂げてきたことは、当時の想像を遥かに超えるものでした。これまで歩んできた道のりを振り返り、Zoomの未来だけでなく、私たち全員の働き方を形作ることになる今後の展望を見据えるには、絶好の機会と言えます。

未来を見据えて過去を振り返る

Zoomは、「Delivering happiness(すべての人に幸せを届ける)」という1つのシンプルなミッションのもとに設立されました。
 
このミッションは、私の原体験から生まれたものです。中国で過ごした少年時代、HPやAppleのストーリーを読んだ私は、シリコンバレーという革新的な世界にあこがれを抱きました。その後、9回にわたるビザの申請却下を経て、ようやくアメリカの地に足を踏み入れることができました。
 
WebExでの初期のキャリアにおいて、人々が単に「つながる」ことだけにどれほど苦労しているかを目の当たりにしました。その後、キャリアを重ねる中で、組織の官僚主義がどのようにイノベーションを阻害するかを学びました。
 
そして2011年、私はゼロから再出発することを決意しました。私とわずかなチームメンバー、大きな夢、そして「真にお客様を第一に考えれば、結果は自ずとついてくる」という強い信念だけを持ってのスタートでした。
 
過去15年間の中で、私は今日に至るまで自身を支え続けているいくつかの教訓を学びました。
 
  • 最も価値あるフィードバックは、去っていくお客様からもたらされる創業当時、私はサブスクリプションを解約されたお客様一人ひとりに自ら電話をかけ、その理由や改善の可能性について伺いました。
  • スケーラビリティを意識した開発は、選択肢ではなくマインドセットそのものです。何百万もの人々が「つながり続けること」を期待している以上、必要とされる前に準備を整えておかなければなりません。私たちは人々をつなぐ基盤を構築した今、働き方そのものを簡素化し、改善するフェーズへと進化しています。
  • 先回りした対応の源泉は、相手への思いやりにあります。他者を深く思いやるとき、人は自然と先を見越し、より良いものを生み出すことができます。
これらの本質的な教訓を胸に刻むことで、Zoomは無名のスタートアップから、誰もが知るブランドへと成長を遂げることができました。しかし重要なのは、これからの未来、そしてその先に待っている展望です。
 
未来を見据える中で、私にはワクワクしていることが数多くあります。その多くが、現在そしてこれからの時代の働き方を決定づけていくものと確信しています。

これからの15年に向けた15の視点

これらは単なる予測や予言ではありません。15年間にわたり、お客様やチームと共にプロダクトを作り上げ、耳を傾け、学んできた経験から導き出された信念です。すでに現実となりつつあるものもあれば、時間を要するものもあります。これらを共有するのは、不変の決定事項としてではなく、皆さまと一緒に未来を模索していくための問いかけとしてです。
 

1. これからの10年は「労働時間を増やすこと」ではなく「より大きな成果を上げること」へシフトする

AIの役割は、会話から実行への移行に伴う摩擦を解消することにあります。それこそが、ZoomにおけるAI戦略の核です。会話の内容を捉え、要約し、タスクを実行するツールにより、人々は細かな調整業務から解放され、より創造的・戦略的な業務に集中できるようになります。真の変革とは、単に処理速度を上げることではなく、「明瞭さ」をもたらすことです。議論や決定から業務が自然と流れるようになれば、私たちは真に重要な業務へ時間を費やせるようになります。
 

2. 「何も決まらないミーティング」は急速に姿を消していく

AIを活用することで、あらゆるミーティングに明確な目的、前提となる文脈、そして事後フォローが担保されるようになります。価値を生み出さないミーティングであれば、最初から参加をスキップすることも容易になります。
 
優れたミーティングは、より軽やかでスピーディー、そして人間味あふれるものになります。参加者全員がその場の議論に集中できるようになり、メモ取りやネクストステップの確認といった雑務に煩わされることがなくなるからです。
 

3. 調整業務は飛躍的に減少する

チーム間の調整、スケジュール作成、メモ取り、事後フォローといった時間のかかる作業は、確実に自動化へと向かっています。
 
真の価値を生み出すのは、機械には再現できない人間の洞察力、人とのつながり、そして共感です。これらこそ、私たちがより多くの時間を費やすべき領域と言えます。AIツールにあらかじめ前提や方針を伝えておくことで、眠っている間にもアイデアが前進し、自分のエネルギーを「問題の管理」ではなく「問題の解決」へと注げる世界を想像してみてください。
 
このような進化こそが、働くことに喜びをもたらします。
 

4. これからの日常業務は「あらゆる会話を成果へと変えること」へ進化する

ミーティング、チャット、メールのすべてが成果へとつながります。目指すべきは単なるコミュニケーションではなく、業務の完了です。過去15年間にわたり、Zoomは組織にとって最も重要ないくつもの会話の場を提供してきました。そして今、AIを活用することで、私たちは「議論されたこと」と「実際に実行されたこと」のギャップを埋めようとしています
 
ミーティングが終わった瞬間には、すでにネクストステップが動き出している光景を思い浮かべてみてください。これは絵空事ではありません。まさに今起きている現実であり、生産性の新たな章を切り拓いています。
 

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5. AIがもたらす最大の価値は「人がより豊かに生きるための支援」にある

「AIに仕事が奪われるのではないか」という強い懸念が存在します。しかし、私は最も強力なAIであっても人を置き換えることはないと確信しています。AIは、時差や言語、組織の壁を越えた連携を促進するだけでなく、ヘルスケアAIがもたらす画期的な進歩によって、人々がより健康に長く生きることにも貢献します。テクノロジーが背景へと退き、人間が主役となったとき、真のイノベーションが巻き起こるのです。これこそが、イノベーションが真価を発揮し、未来を切り拓く瞬間と言えます。
 

6. これからの時代は「カスタマーエクスペリエンス」を中心に据える企業が制する

あまりにも長い間、顧客は企業の都合や内部システムに合わせることを強いられてきました。これからの時代に勝利を収めるのは、すべてを「アウトサイド・イン(顧客視点)」で設計する企業です。相手への配慮を出発点とし、顧客の目線に立ってプロセスを再構築すれば、最終的にはシンプルさに辿り着きます。そして多くの場合、勝利するのはこの「シンプルさ」です。
 

7. 最も成功を収める企業は、AIを活用して「人同士のコラボレーション」を最優先にする

テクノロジーは人を孤立させるためではなく、より深くつなげるために存在するべきだと信じています。優れたAIは、信頼とチームワークを強固にする役割を果たします。人の声をより深く聴き、素早く理解し、真の共感をもって行動するための手助けとなってくれます。こうしてテクノロジーは隔たりではなく、架け橋となっていくのです。
 

8. AI変革の新たな波は「人間が直面する真の課題」の解決から生まれる

イノベーションや飛躍的な進化は、単にインフラを増設したり大規模言語モデル(LLM)を追加したりすることだけからは生まれません。日常業務をよりシンプルに、そして「人間らしく」変革していく応用アプローチからこそ生まれるものです。最も大きな影響をもたらすのはバイオテクノロジー領域におけるAI活用であり、これまで不治とされていたがん、パーキンソン病、認知症などの克服にもつながると確信しています。人間が直面する真の課題に向き合い、情熱をもってリードする企業や機関こそが、最終的に成功を収めることになります。
 

9. テクノロジーは「人のために」存在するものであり、その逆ではない

プロダクトに関するあらゆる意思決定は、「これは使う人の生活をより良くするか?」という問いから始まるべきです。共感をもって作られたプロダクトこそが、時代を超えて残り続けます。最も優れたテクノロジーとは、非常にシンプルかつ直感的であり、自然と背景へ溶け込んで「使う人自身」を輝かせるものと言えます。
 

10. イノベーションはボトムアップのアイデアが意思決定者に届くかどうかにかかっている

大企業においては、優れたアイデアが中間層で埋もれてしまうケースが少なくありません。最適な設計とは技術的な要素だけでなく、組織内のプロセスも極めて重要な構成要素となります。フラットでオープン、そして探求心を失わない企業こそが、他社が減速した後も長く進化を続けていくことができます。
 

11. イノベーションの未来に国境はない

優れた才能は世界中に存在します。国境を越えたコラボレーションを取り入れる企業こそが、まだ誰もの想像にない革新的なプロダクトを生み出します。画期的なアイデアは、ナイロビの開発者、サンパウロのデザイナー、あるいはソウルの教師から生まれるかもしれません。それこそが、私たちが歓迎し尊重すべき可能性です。
 

12. リモートワーク下で「信頼」を選んだ企業が未来をリードする

パンデミックは、すべてのリーダーに「管理」か「信頼」かの選択を迫りました。社員を信頼する道を選んだ企業は、より強固で柔軟な組織文化を築き上げています。信頼に基づくアプローチは、管理によるアプローチよりも迅速かつ効果的に機能します。信頼の文化こそが、あらゆるビジネスにおける成功の真の指標と言えます。
 

13. ハイブリッドワークは一時的な流行ではなく定着している

ハイブリッドワークが一時のトレンドではなく、新たな標準となったことは時間が証明しています。柔軟な働き方は今や働く側にとって当然の前提であり、これに抵抗する企業は優秀な人材を失うリスクを抱えます。これからの未来を制するのは、拘束時間ではなく成果を適切に評価する組織です。
 

14. 週休4日制は現実になると確信している

法改正によるものではなく、AIがそれを可能にするからです。テクノロジーが標準的な標準労働時間を再定義するのは、歴史上初めてのことではありません。1世紀前、労働者に週2日の休日を与えるという発想は、それが定着するまでは非常に極端な考えと受け止められていました。この変化をもたらしたのは人々の意識改革ではなく、新たなツールの登場により経済的な実現可能性が生まれたためです。私たちは今、まさに同様の転換点を迎えています。
 
AIは、本質的な価値を生み出すことなく膨大な時間を費やしていた調整の手間、進捗の報告、スケジュール作成のやり取り、業務の滞りを着実に解消しつつあります。こうした摩擦が取り除かれたとき、労働時間の短縮は単なる理想論ではなく、極めて現実的な選択肢となります。
 
私の考えでは、生産性が低下することはありません。むしろ多くのナレッジワーカーにとって生産性は向上し、誰もがより多くのプライベートな時間を取り戻せるようになると確信しています。
 

15. 「配慮」こそが最高の競争優位性である

最後になりますが、これこそがZoomにおけるすべての活動の核となる考え方です。人材の定着、イノベーション、そして顧客のロイヤルティは、すべて「従業員が心から相手を思いやれているか」という一点に集約されます。配慮の姿勢があれば、成果は自然と後からついてくるものです。過去15年で私が学んだことがあるとすれば、それは「配慮とは曖昧な価値観ではなく、強力なビジネス戦略である」ということです。これこそが、単なる優良企業を真の偉大な企業へと変革させる要素と言えます。

これからの15年

15年前、Zoomは「シンプルさと人間的なつながりが勝利する」という賭けから始まりました。その賭けが実を結んだのは、それを信じてくれた人々、私たちのチーム、お客様、そして最も重要な局面でつながりを維持するためにZoomを信頼してくださった世界中の何百万もの人々が存在したからです。
 
今、私たちは新たな章へと踏み出しています。もはや「AIが働き方を変革するかどうか」が問われる段階ではありません。重要なのは、業務を効率化するだけでなく、より人間らしく、働くこと自体を楽しくする形でテクノロジーを築き続けられるかどうかにあります。
 
これからの15年がどのような姿になるか、正確に見通すことはできません。しかし、私たちがどのような姿勢で挑むべきかは分かっています。好奇心と謙虚さを持ち、私たちをここまで導いてくれた信念を胸に進んでいきます。

人々に愛されるものを創り出し、現場の声に耳を傾け続ける限り、最高の瞬間はこれから訪れます。

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